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旅行業の資格申請における監査証明(監査報告書)の発行について

2018-07-27

1.はじめに
2.旅行業の資格申請・更新に必要な財務要件
3.旅行業で監査が必要になる場合

1.はじめに
最近、当ホームページを見たといって、監査証明(以下、監査報告書)の発行を依頼されることが増えてきています。
少し前ですが、旅行業の企業から、旅行業の資格更新のための監査の依頼を受け、今回お受けすることとなりました。

2.旅行業の資格申請・更新に必要な財務要件
旅行会社を設立するには、「旅行業」に登録し許可が必要になります。
ここでは、旅行業の申請・更新に必要な財務要件についてのみ記載します。
手続、条件等財務以外の要件については、旅行業を専門とする行政書士の先生のHP等をご参照ください。
(1) 基準資産額
「旅行業」として登録する場合、規模及び取扱いの範囲により「第1種」「第2種」「第3種」「地域限定」に区分されます。
「基準資産」の金額は、「旅行業」の種別により
第1種:3,000万円
第2種:700万円
第3種:300万円
地域限定:100万円
以上が必要になります。なお、「旅行業者代理業」に登録する場合は、基準資産の要件はありません。
基準資産額の計算方法は以下の通りです。
(資産総額-繰延資産-営業権-不良債権)-負債総額-営業保証金(または弁済業務保証金分担金)
注:
・繰延資産:創立費、開業費など、支出した費用のうち効果が1年以上に及ぶため、資産に計上するもの
・営業権:会社を買収した際に、「買収額>買収した会社の純資産額」である場合の差額
・不良債権:長期(1年以上が目安)にわたって回収がなく、これからも回収見込のない債権
・営業保証金または弁済業務保証金分担金:(2)で説明します。

(2) 営業保証金及び弁済業務保証金分担金
① 旅行業では、業界特有の慣習として「営業保証金」制度があります。
最近、ある旅行会社が倒産し、代金支払い後の旅行者が、返金を受けられずまた旅行にも行けず困惑したことは記憶に新しいと思います。
すなわち、上記の例のように、旅行者が泣き寝入りをしないように、 旅行会社に財産の一部を納付させ不測の事態に備え旅行者を保護する目的で定めたのが、
営業保証金(弁済業務保証金分担金)制度です。
保証金の金額は種別ごとに定められており、それぞれ
第1種:7000万、
第2種:1100万、
第3種:300万、
地域限定:100万
以上と決められています。
② 「弁済業務保証金分担金」は、①で述べた営業保証金と同じ趣旨をもつ保証金ですが、
旅行業協会に加入し、営業保証金の1/5の金額を旅行業協会に預けることにより、「営業保証金」の供託と同等の保証を行う制度です。
旅行業協会には、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)の2つがあり、 加入は任意です。
しかし、加入により保証金の金額が1/5になるため財務的負担は軽くなり、加入している旅行会社も多いです。

3.旅行業で監査が必要になる場合
人材派遣業及び紹介業については、決算以外で要件を満たした場合の監査の必要性は明記されていますが、
旅行業については、決算期以外で要件を満たした場合、特に明文の規定はなく、観光庁に問い合わせて対応することになります。
今回は、観光庁から「資格更新の要件を満たした月の財務諸表を作成し、公認会計士等の監査を受け監査報告書を添付する」旨の指導要請がありました。
実際に東京都産業労働局のHPでは、「直近の決算について税務申告書の代わりに財務監査証明書(監査報告書のこと)の添付で足りる」と記載がありますが、
年度の途中での対応については特に記載がありません。
旅行業の資格更新は、年度末の決算で要件を満たすことが必須であると考えられます。
東京都産業労働局HP
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/sinsei/tourism/ryokotsuyaku/ryokotouroku/

一般労働者派遣事業等における監査証明(監査報告書)についてよくある問合せ

2018-07-02

1.はじめに
2.監査報告書発行のフロー
3.顧問税理士との関係
4.料金
5.監査報告書の日付

1.はじめに
最近当ホームページを見たといって、監査証明(以下、監査報告書)の発行を依頼されることが増えてきています。
労働派遣法の猶予期間が9月29日までであることから、特に5月以降問い合わせが増えてきています。
6月だけでも7件の問い合わせがあり、一部ですが監査の契約に至りました。
同じ趣旨の質問を受けることが多々あるので、「よくある質問」としてまとめました。
ご一読くださるとありがたいです。

2.監査報告書発行のフロー
最も多いのが、「監査報告書はどのくらいで発行されるのか」という問合せです。
問合せの都度説明しておりますが、お問い合わせ後監査報告書(いわゆる監査証明書)を発行までのフローを記載します。

(1)問合せ後事前の打ち合わせまで
・誤解されている方が多いですが、役所の各種証明書等の発行と違うので、問合せ後直ちに監査報告書は発行できません。
お問い合わせ元から提出された決算書を監査して、正しいことを確認して初めて監査報告書が発行されます。
・監査実施日の前に、事前に1時間ほど打ち合わせをします。(場所は原則貴社)
・監査契約の依頼はこの打合せ開始前までにご決定ください。依頼者及び当事務所双方に多大な負担がかかってしまいます。
・目的:監査当日までに資料を準備することにより、監査時間の短縮に努める。
・内容:どの取引についてどんな証憑を確認したいか、決算で修正が必要な個所はあるか、などの事前確認、および監査実施日の決定(なお、監査にかかる時間は最低でも丸1日をご予定ください。半日で終わらせてくれ等のご要望はお受けできません)
・事前準備物:前期末の決算書及び労働局に提出予定の仮決算書(または月次決算書)もしくは試算表。
・同時に、当期首から仮決算の日までの仕訳帳、総勘定元帳。(事前にメール送信される方もいますが、機密保持の面からお会いした時にいただくことにしています)

(2)事前打合わせ後、監査実施まで
・(1)で用意いただいた仕訳帳、総勘定元帳をもとに、当事務所で確認したい取引を抽出し、関連する元資料の準備を依頼します。
・当日までに関連する元資料(請求書、領収証、通帳等)を準備します。

(3)監査実施から監査報告書提出まで
・作成した決算書が正しいか第三者の立場から(取引先ではない等)監査を行い、正しいことが確認できたら監査報告書を発行します。
・監査終了後数日(3日~7日)で、監査報告書をお届けします。依頼元から入金が確認できた後にお渡しします。
・なお、(2)で決定した実施日までに、すべての資料が準備できない場合は監査日程の変更をします。
(資料がそろわない場合、監査は実施できません。貴社が作成した決算書が正しいことが確認できず、監査報告書を作成できないためです。)

3.顧問税理士との関係
 最近の問合せのあった複数の会社から、このような依頼を受けることがあります。
・「人材派遣業の新規登録のために、監査報告書の発行をお願いしたい。税理士事務所の番号を教えるので連絡をとり、事前打ち合わせの日程を決めてほしい」
 問合せを受けただけの段階では、当事務所と問い合わせ元の顧問税理士とは無関係であり、また監査契約締結前でもあるので、当事務所から直接顧問税理士に連絡を取ることはありません。
 顧問税理士にも迷惑をかけてしまいますので、事前の日程調整等は当事務所を通さず問い合わせ元と顧問税理士との間でお願いします。
・また、問合元の記帳代行会社または顧問税理士から「監査報告書の発行をお願いしたい」という依頼を受けることがあります。この場合は問い合わせ元または依頼者が事前に同意している場合のみ対応いたします。

4.監査料金
 以前から料金については記載していますが、問合せが多いため再度記載します。
 監査のための最低料金は下記であり、この金額以下ではお引き受けできません。金額の目安が知りたい方は、こちらの金額をご予定ください。
       打合せ時間料     作業時間料   証明書発行料   合計   追加監査時間
新規許可申請 1時間(2万円/時) 1日7時間(2万円/時) 10万円   25万円   2万円/時
更新許可申請 1時間(2万円/時)   4時間(2万円/時)  5万円   15万円   2万円/時
(消費税が別途かかります。)
・料金は証明書発行料と監査のための作業料から構成しています。どちらかの料金のみということはできません。
・理由は、2.で記載の通り、監査報告書は依頼後即時発行はできません。依頼者の決算書が正しいか確認するためにある程度の時間がかかるためです。あらかじめご理解ください。
 また、依頼の状況により金額は多少変動します。例えば、
・ご依頼が当月で当月末までに労働局に届け出など、緊急を要する場合は、緊急作業料として5万円~10万円を追加しています。
・一方、資料のご準備が順調で、時間が予定より早く終了した場合は、作業時間1~2時間分(2万~4万円相当)請求額が低くなることもあります。

5.監査報告書日付
 こちらについても再度記載します。
・監査報告書の日付は原則入金のあった日とし、入金確認後監査報告書を発行します。前日付をご希望の場合は前金にてお支払いください。
・例えば前月末の日付等、前日付をご希望の場合、4.料金で定めた最低料金、つまり新規許可申請の場合は25万円、更新許可申請の場合は15万円(消費税別)をいただいてから監査を実施します。

人材派遣業・紹介業に関する注意点

2018-03-18

1.大企業が人材派遣業を申請する場合
2.更新時期に注意
3.労働者派遣法の改正

1.大企業が人材派遣業を申請する場合
 最近、当ホームページを見たという方から、人材派遣業・人材紹介業の新規申請(特定派遣から一般派遣への変更も含みます)の問合せが増えてきています。
特にこの1年は、上場企業のグループ会社や、公認会計士の会計監査を受けているような大規模企業からも問い合わせをいただいています。
上記企業の相談を受けていると、共通している事項があります。人材派遣業の登録に必要な3条件のうち「現金預金要件」つまり
・1事業所当たり自己名義の現金および預金額1500万円以上(人材紹介業は150万円)
の要件を満たしていないことです。
上場企業の場合、親会社を持ち株会社にする、業務ごとに多くのグループ会社を設立していること等に原因があります。企業グループ内で人材派遣業(または紹介業)の資格を持つ企業(ほとんどの場合子会社)では、通常の業務で支払に必要な資金のみ保有し、決算時は、社内資金を親会社または資金管理を行うグループ会社に預け、資金は最低限の金額のみ保有しています。
そのため、期末の決算では、社内に現金及び預金が不足し、人材派遣業(または紹介業)の申請に必要な要件を満たさないことになってしまいます。
例えば、「決算時に1,000を親会社またはグループ会社の資金管理会社に預けた」場合、
(借方)預け金1,000 (貸方)預金1,000
という仕訳になります。
「預け金」は、グループ会社に対する債権(売掛金、未収入金と同等)であり、預金とは異なります。

上記の結果、申請を行った際の前期末の決算で、「現金預金要件」を満たさないことになります。
そのため、年度の途中で任意の月(上場企業の場合、四半期決算の時期を選定することが多いです)で仮決算を行い、別途公認会計士の監査を受けた上で監査報告書を受領し、労働局に申請を行うことになります。(なお、株主総会で役員等の変更があれば、登記簿謄本を再度取得し労働局に届けることになります)

預け金として処理する場合、「グループ会社内で一時的に資金を移動させるだけで、実質は預金と同等」という考えもあります。
確かに現在の企業会計においては、連結決算(企業グループ全体で業績を判断すること)が中心となり、税務についても連結納税(グループ会社全体で法人税を納付すること)が採用されています。しかし人材派遣業(もしくは紹介業)の申請については、企業グループではなく、“申請を行う企業”単位で要件を満たしているか判定します。(連結納税制度を採用している企業グループでは、連結納税していることを証明する書類の提出も求められます)
従って、現行の制度では、いわゆる「預け金」は「現金預金要件」を構成する項目として認められていないため、労働局から許可を得ることは不可能です。
大企業のグループ会社で、人材派遣業または人材紹介業を新規に申請または更新を予定している会社のご担当の方は、上記にご注意ください。経理部門と相談の上、決算時における社内の資金の確保をご検討ください。

2.更新時期に注意
新規申請及び更新の認可は、通常月初に行われます。
新規申請の場合、有効期間は3年、そのあと更新を行う場合の有効期間は5年となります。
資格の更新ですが、3月決算の企業が、有効期限が6月末までの人材派遣(または紹介)業の保有資格を持っている場合、通常は有効期限の3か月前までに保有資格の更新を行います。
上記の例では、資格の期限がX1年6月末の企業は、X1年3月末が更新期限になります。更新時期のX1年3月の決算書を提出すれば万事解決ですが、X1年3月末にX1年3月末の決算書を提出することは不可能です(提出先の労働局職員も同じことを話すと思います)。
そうなると、更新期限の前年のX0年3月末の決算において、人材派遣業または紹介業の要件をすべて満たしておく必要があります。もし満たしていない場合は、条件を満たすことができた任意の月で決算を行い、公認会計士による監査を受け、監査報告書を発行してもらうことになります。
更新期限の前年の決算において、要件を満たせるかどうか慎重にご検討ください。

3.労働者派遣法の改正
会計監査のこととは外れますが、重要な改正なので記載します。
厚生労働省HPより、「特定労働者派遣事業」平成30年9月29日まで!
労働者派遣業は「許可制」(現在の一般労働者派遣業)に統一されます!の案内
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000178229.pdf
東京労働局HPより、特定労働者派遣事業(届出制)から労働者派遣事業(許可制)へ早期切替を!の案内
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0147/1355/2016531163053.pdf
平成27年9月30日に労働派遣法が改正され、労働者派遣業は「許可制」に一本化されました。経過措置が平成30年9月29日まで設けられていましたが、この経過期間もあと6か月で終了します。
・平成30年9月30日以降労働者派遣事業を行う場合すべて許可が必要になります。許可なく労働者派遣事業を行うと「無許可派遣」とみなされ、労働局から指導を受けることとなります。(企業名公表、罰則等)
・許可を受けるためには、許可を受けるための条件を満たす必要があります。(財産的基礎、事業所、派遣元責任者に関する要件)
経過期間の終了が近くなる時期は、多くの企業が申請に訪れ混雑するとともに、審査に数か月の時間を要しますので、早めにご対応をお願いいたします。
なお、労働者派遣事業の届け出手続については、公認会計士及び行政書士ではなく「社会保険労務士」にお問い合わせください。

一般労働者派遣事業等における監査証明(監査報告書)について

2016-08-28

1.はじめに
2.監査の作業場所
3.監査対象
4.料金
5.報告書の日付
6.そもそも監査報告書が必要なのか?

1.はじめに
 最近、当ホームページを見たといって、監査証明(以下、監査報告書)の発行を依頼されることが増えてきています。
 新しい仕事の機会をいただくこと、会社との新しいご縁ができるという点で非常にありがたいことなのですが、取扱件数が増えてくるに従い、様々な問題も現れてきたので、トラブルなく気持ちよく取引ができるよう、監査報告書発行のご依頼を受ける際の方針を決めました。

2.監査の作業場所
・監査作業は会社に直接伺って行います。
 監査報告書の発行は、会社の決算書(貸借対照表と損益計算書、以下B/S、P/L)を監査する必要があり、
(1)残高の多い勘定科目
(2)前年度末と監査の対象となる月の残高と比較して、増減額の大きい勘定科目
を中心に実施します。
 その際、決算書作成の元となる試算表、総勘定元帳、仕訳帳を閲覧しますが、その他に領収証や請求書、預金通帳等の証憑もチェックし、金額・内容が正しいかどうか確認します。
 当初、会社を訪問せず、監査に必要な書類を、メールや郵送でやり取りして対応することも想定していましたが、
・監査に必要な証憑が届いていない、もしくは追加で確認したい証憑が欲しいが、再度資料の依頼をすると時間がかかる。
・会社が原本を送るのは紛失時にトラブルになる。
・紛失を防ぐためコピーを送り対応をとるが、コピーだと改ざんの恐れがある。
 このようなケースが生じ、監査の品質が十分に確保できなくなるため、監査を行う際は、会社へ直接お伺いすることにいたしました。
 
3.監査対象
・B/S、P/Lが作成されていない場合には、監査契約をお引き受けしません。
監査報告書には、「貸借対照表と損益計算書について監査した」という文言が入ります。
年度末にはどの会社もB/S、P/Lを作成し税務署に届けますが、年度末以外の月では、残高試算表のみを作成している会社が多く見られます。
監査報告書は、「B/S、P/L」について監査意見を表明しますので、「試算表」は監査のためのチェック資料になりますが監査の対象になりません。
もし監査を実施した場合、監査報告書に嘘を書くことになります。
また、「B/S、P/Lもないけど、“預金通帳”と“資本金を記載した登記簿謄本”ならあるので、監査をお願いします」という依頼もありますが、B/S、P/Lが存在しない以上、監査契約は締結できません。

4.料金
・監査報告書発行のための最低料金を定め、この金額以下ではお引受しないこととしました。
   打合せ時間料  作業時間料 証明書発行料 合計 追加監査時間
新規許可申請 1時間(2万円/時)  1日7時間(2万円/時) 10万円 25万円 2万円/時
更新許可申請 1時間(2万円/時)   4時間(2万円/時) 5万円 15万円 2万円/時
消費税が別途かかります。

監査依頼の連絡をいただく際、当然ながら必ず料金の事が出ます。
 電話やメールでは、依頼会社の規模がわからないため、監査に要する作業時間を見積もることができません。
 あらかじめ試算表などを送っていただくことにより、ある程度必要時間の算出はできますが、実際に監査作業をしないことには正確な時間はわかりません。
 一方、依頼する会社にとって、予算の関係上監査にかかる費用、時間は最小限にしたいものです。
 そこで、今までの経験をもとに、必ずかかっている必要最低時間を考慮して、監査報告書発行のための最低料金を設定しました。ただし会社の規模、監査の進捗によっては、最低料金に相応する時間では終了せず、追加時間に従い追加料金が発生します。
 また、料金について補足です。
 監査実施場所は上述2.の通り、会社にお伺いして実施します。
 そのため、遠方の会社から依頼を受けた場合は、会社までの交通費を料金に加算します。
 例えば、大阪の会社に監査に行く場合、通常の報酬プラス東京から大阪までの新幹線及び会社までの電車代を加算します。
 なお、当事務所は東京都内のため、都内及び関東近県(新幹線、特急を利用しない範囲)については別途交通費をいただきません。

5.監査報告書日付
・監査報告書の日付は、原則入金のあった日とし、前日付をご希望の場合は前金にて報酬をいただきます。
 監査報告書の日付は、今までは会社の希望日とし、報告書提出後請求書を発行していました(入金期限は多くは当月末)。
 ところが、件数が増えてくるに従い、監査終了後に請求書を発行してもなかなか入金されず、数か月入金がされないこともあります。
 料金を最初にはっきり決めなかったこと及び、会社からの事後値引きに対応し料金が変動したことが原因ですが、料金を頂かないと、監査報告書発行という責任の重い業務を無報酬で引き受けることになります。
 そのため、料金収受を確実に行うために、入金日を以て報告書を発行し、例外として、例えば前月末の日付等前の日付をご希望の場合、4.料金で定めた最低料金、つまり新規許可申請の場合は25万円、更新許可申請の場合は15万円(消費税別)をいただいてから監査を実施します。

以上数点にわたり取り決めを行いご面倒をおかけしますが何卒ご理解ください。

6.そもそも監査が必要なのか?
 上記2~5のとおり、一般労働者派遣事業等における監査報告書の発行について、様々な取決めをしましたが、人材派遣業の新規登録及び更新において公認会計士の監査報告書が必要になるのは、
・前年度末の決算で3つの要件(基準資産、負債比率、現預金)のいずれかを満たさなかったが、
・その後翌事業年度までの任意の月ですべての要件を満たした
場合に限られます。
 従って、年度末の決算で要件をすべて満たした場合には、監査報告書の発行は必要とされません。
 監査報告書の発行には決して安くはない料金がかかります。人材派遣業・人材紹介業の新規登録及び更新において、
・年度の途中で要件を満たしたからといって、わざわざ公認会計士に時間と費用をかけて監査をお願いする理由はあるか?
・監査報告書の必要のない年度末まで待って申請してはいけないのか?
を今一度ご検討ください。
 以前、監査報告書発行のご依頼をいただいた後、役員会で決算まで待つことにして監査の依頼をキャンセルした会社がありました。
 当事務所としては仕事がなくなり残念ですが、経営者の立場からは賢明な判断とも考えられます。

一般労働者派遣事業等における監査証明

2015-04-13

一般労働者派遣事業等における監査証明

1.どういう仕組?

2.監査では何をする?

3.事前の準備は?

4.料金は?

5.会計士を探すときの注意点

 

1.どういう仕組?

厚生労働大臣の許可が必要とされている(労働者派遣法5条)「一般労働者派遣事業」および「職業紹介事業」(以下、一般労働者派遣事業等)について、新たに許可申請または許可の更新しようとする会社は、公認会計士または監査法人(以下、会計士等)による監査証明が必要になることがあります。

(税理士では監査証明業務はできません。また、公認会計士でも当該会社の顧問税理士をしている場合は、独立性確保の観点から監査を行うことはできません)

会社の直近の決算において下記の要件(※1)をすべて満たしていれば、会計士等の監査証明が不要ですが、満たされていない場合は、預金や資産を増やす等要件を満たしたのち、決算月以外の任意の月次の貸借対照表および損益計算書について会計士等により監査を受け、監査証明を添付して労働局に提出し審査を受けることになります。

 

※1会社が申請時に満たすための要件

要件 一般労働者派遣事業 職業紹介事業
(1)基準資産要件 1事業所当たり基準資産額(※2)が2000万円以上 1事業所当たり基準資産額が500万円以上(更新申請時は350万円以上)
(2)負債比率要件 基準資産額が負債総額の1/7以上 条件なし
(3)現金預金要件 1事業所当たり自己名義の現金および預金額1500万円以上 自己名義の現金および預金残高が、150万円+(職業紹介をする事業所数-1)X60万円

※2基準資産額:資産の合計に繰延資産およびのれんを除いた額から、負債の総額を控除した額

 

 

以上をまとめると、会計士等の監査証明の可否は下記の表の通りになります。

新規申請

更新申請

前年度末の決算で要件をすべて満たした場合

不要

不要

前年度末の決算で要件を満たさなかったが、その後翌事業年度までの任意の月ですべての要件を満たした場合

必要

必要(但し、合意された手続実施結果(※3)によることも可)

※3合意された手続(AUP=Agreed Upon Procedures):会社の決算書全体について会計士等が証明するのではなく、各要件を構成する勘定科目の金額が正しく計上されたものかどうかのみについて保証する手続のことを言います。

通常、手続を行う主な勘定科目は、現金、預金、売掛金、未収入金、未払費用、前受金、借入金、商品、土地、建物、ソフトウェア、貸付金があります。

 

2.監査では何をする?

一般労働者派遣事業の申請を満たすための監査では、通常以下の4種類を実施します。

(1)前年度の決算書に計上された各勘定科目の金額と証憑類の照合

(2)申請の対象となった当年度の任意の月に計上された各勘定科目の金額と証憑類との突合

(3)前年度末から対象月までの期間における主な増減の内容

(4)関係方針の継続適用

上記の手続が行いやすくするように、以下の事前準備をしっかりしておきましょう。

 

3.事前の準備は?

(1)スケジュール確認

いつまでに申請・提出が必要なのか労働局によく確かめておきましょう。

そこから逆算して、「監査報告書」又は「合意された手続実施結果報告書」(以下、監査報告書等)がいつまでに必要なのかスケジューリングしていくことが大切です。

たとえば、1月末までに申請が必要であれば、1月中に監査報告書を入手しなければなりません。監査もすぐにできるものではありませんから、監査にかかる日数もあらかじめ計算に入れておきましょう。

 

(2)仮決算の実施

決算月以外の任意の月で申請・提出予定であれば、事業年度の途中の月で仮決算を行うことが必要です。(実際には申請する月の前月までの決算を行う会社が多いようです。たとえば1月末申請ならば、遅くても12月までの決算を行います。)

仮決算といっても、年度末の決算と同程度の決算手続が求められます。これは「合意された手続」を実施する場合でも同様です。

すなわち、下記のような処理を行います。

・減価償却費の計上

・前払費用、未払費用の計上

・期末棚卸資産の計上

・貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金など、各種引当金の計上

・(実際に確定申告・納付はしませんが)法人税・住民税などの算出

決算書の数値がすべての許可要件をクリアできる月であり、かつ、提出期限に間に合う月をご選択下さい。会計業務を顧問税理士に経理記帳をご依頼されている会社は、顧問税理士と、いつ月次決算が終了するかなど、事前に検討・確認しておくことが重要です。なお、監査時はできれば、顧問税理士に立ち会ってもらった方がよいでしょう。

 

(3)決算書等の作成

(2)で選択した仮決算を行う月において、作成期間を明示して(例:自2014年4月至2014年12月31日 など)決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)をご作成下さい。タイトルは、正規の年度末決算と間違えないように「月次決算書」とでもしておいたほうがよいでしょう。

年度末の決算書に勘定科目内訳を作成するのと同様に、仮決算においても貸借対照表のすべての勘定科目については、科目の内訳を作成します。

監査人は、作成された勘定残高がどのような内訳から構成されているのかを確認するので、内訳表がないと監査できず、その結果監査証明がもらえないことになってしまいます。

あと、決算書及び各種会計帳簿(総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳、各種補助元帳など)は、事業年度末と仮決算の月の分をあらかじめ紙に印刷してファイリングしておきましょう。

会社自身のセルフチェックもでき、また監査人も資料が見やすくなるため、監査にかかる時間が少なくなることになります。

監査当日に顧問税理士から総勘定元帳をFAXやメールで送ってもらうような事態は避けましょう。

 

(4).証拠資料の整理・保管

各勘定の内訳を作成すると同時に、作成の根拠となった資料をそろえておきましょう。

たとえば以下のようなものがあります。

「現金」:会社用に使っている現金そのものや現金出納帳や実査金種表等

「預金」:通帳や銀行から発行された残高証明書等

「売上」「売掛金」:請求書控えや売上管理台帳等、

「給与手当」「未払給与」:給与台帳等

「外注費」「未払外注費」:請求書、領収証等

監査をする人は、内訳明細と上記の証憑類を突き合わせて、内容が一致しているか確かめます。もし証拠資料がなければその内訳は存在しないものとして扱われてしまいます。

もし手元にない場合は、(請求書であれば)相手先に再度発行してもらいましょう。

 

4.料金は?

新規に許可を得て行う場合、監査証明が必要になるので、相応の時間がかかります。

監査証明を発行するためには、決算書の勘定科目(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)をすべて監査するので、最短でも1日半~2日、資料等が十分にそろっていなかったらさらに時間がかかります。

更新の場合、対象となる勘定科目が少ないことと、「火合意された手続実施結果報告書」(監査ではなくなります)になるので、時間は少なくなります。

資料がすべてそろっていれば、半日~1日で完了するでしょう。

当事務所で監査証明発行をお受けした場合の報酬は、以下のようになります。

作業時間料

証明書発行料

合計

新規許可申請 1.5~2日(2万円/時) 10万円~15万円 25万円~40万円
更新許可申請 0.5~1日(2万円/時) 5万円~10万円 11万円~24万円

注:明細を作成していなかったり、資料がそろっていなかったり等、書類が不備な場合、および監査の結果、決算の修正が必要になり追加の監査時間がかかる場合は、上記の表に追加して作業時間報酬が発生します。

 

5.会計士等を探す際の注意点

一般労働者派遣事業および職業紹介事業の新規登録・更新で監査証明が必要なことを知っている会計士は、非常に少ないと思います。

新規申請と更新との違いについてもよく知らないことから、会計士の手続に不備が生じ、監査を依頼した会社との間でトラブルになることもよくあります。

いくつか注意点をあげてみました。

① 制度を理解していない会計士はNG

会計士が制度をよく理解していないようであれば、報酬が安くても、頼まないほうが無難です。

問合せ時に、作成した監査報告書はどこに提出されるのかなど、専門知識を確かめてもよいでしょう。

 

② 監査をする意味があるかどうか理解している会計士はOK

一般労働者派遣事業、人材紹介事業の監査証明をもらっても、登録申請が通らない場合があります。

そのあたりの事情を知っている会計士は、会社の状況をヒアリングしたうえで、監査をすることに意味があるかどうかを判断します。会社が条件を満たすことができるかある程度把握できるからです。依頼する際に、財務内容の質問がなかった場合は、依頼しない方がよいでしょう。①と同様、トラブルがおこりやすくなります。

 

③ 個人の会計士に頼む場合は、報酬に違いなし

通常、監査法人に頼む場合、個人会計事務所よりも報酬が高くなりますが、個人の会計事務所に依頼する場合、報酬は大差ないと思います。

 

(参考)

日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会研究報告第24号

一般労働者派遣事業 等の許可審査に 係る中間 又は 月次決算書に対して公認会計士等が行う 監査及び合意された手続業務に関する研究報告

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/24_7.html

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