3月, 2018年

人材派遣業・紹介業に関する注意点

2018-03-18

1.大企業が人材派遣業を申請する場合
2.更新時期に注意
3.労働者派遣法の改正

1.大企業が人材派遣業を申請する場合
 最近、当ホームページを見たという方から、人材派遣業・人材紹介業の新規申請(特定派遣から一般派遣への変更も含みます)の問合せが増えてきています。
特にこの1年は、上場企業のグループ会社や、公認会計士の会計監査を受けているような大規模企業からも問い合わせをいただいています。
上記企業の相談を受けていると、共通している事項があります。人材派遣業の登録に必要な3条件のうち「現金預金要件」つまり
・1事業所当たり自己名義の現金および預金額1500万円以上(人材紹介業は150万円)
の要件を満たしていないことです。
上場企業の場合、親会社を持ち株会社にする、業務ごとに多くのグループ会社を設立していること等に原因があります。企業グループ内で人材派遣業(または紹介業)の資格を持つ企業(ほとんどの場合子会社)では、通常の業務で支払に必要な資金のみ保有し、決算時は、社内資金を親会社または資金管理を行うグループ会社に預け、資金は最低限の金額のみ保有しています。
そのため、期末の決算では、社内に現金及び預金が不足し、人材派遣業(または紹介業)の申請に必要な要件を満たさないことになってしまいます。
例えば、「決算時に1,000を親会社またはグループ会社の資金管理会社に預けた」場合、
(借方)預け金1,000 (貸方)預金1,000
という仕訳になります。
「預け金」は、グループ会社に対する債権(売掛金、未収入金と同等)であり、預金とは異なります。

上記の結果、申請を行った際の前期末の決算で、「現金預金要件」を満たさないことになります。
そのため、年度の途中で任意の月(上場企業の場合、四半期決算の時期を選定することが多いです)で仮決算を行い、別途公認会計士の監査を受けた上で監査報告書を受領し、労働局に申請を行うことになります。(なお、株主総会で役員等の変更があれば、登記簿謄本を再度取得し労働局に届けることになります)

預け金として処理する場合、「グループ会社内で一時的に資金を移動させるだけで、実質は預金と同等」という考えもあります。
確かに現在の企業会計においては、連結決算(企業グループ全体で業績を判断すること)が中心となり、税務についても連結納税(グループ会社全体で法人税を納付すること)が採用されています。しかし人材派遣業(もしくは紹介業)の申請については、企業グループではなく、“申請を行う企業”単位で要件を満たしているか判定します。(連結納税制度を採用している企業グループでは、連結納税していることを証明する書類の提出も求められます)
従って、現行の制度では、いわゆる「預け金」は「現金預金要件」を構成する項目として認められていないため、労働局から許可を得ることは不可能です。
大企業のグループ会社で、人材派遣業または人材紹介業を新規に申請または更新を予定している会社のご担当の方は、上記にご注意ください。経理部門と相談の上、決算時における社内の資金の確保をご検討ください。

2.更新時期に注意
新規申請及び更新の認可は、通常月初に行われます。
新規申請の場合、有効期間は3年、そのあと更新を行う場合の有効期間は5年となります。
資格の更新ですが、3月決算の企業が、有効期限が6月末までの人材派遣(または紹介)業の保有資格を持っている場合、通常は有効期限の3か月前までに保有資格の更新を行います。
上記の例では、資格の期限がX1年6月末の企業は、X1年3月末が更新期限になります。更新時期のX1年3月の決算書を提出すれば万事解決ですが、X1年3月末にX1年3月末の決算書を提出することは不可能です(提出先の労働局職員も同じことを話すと思います)。
そうなると、更新期限の前年のX0年3月末の決算において、人材派遣業または紹介業の要件をすべて満たしておく必要があります。もし満たしていない場合は、条件を満たすことができた任意の月で決算を行い、公認会計士による監査を受け、監査報告書を発行してもらうことになります。
更新期限の前年の決算において、要件を満たせるかどうか慎重にご検討ください。

3.労働者派遣法の改正
会計監査のこととは外れますが、重要な改正なので記載します。
厚生労働省HPより、「特定労働者派遣事業」平成30年9月29日まで!
労働者派遣業は「許可制」(現在の一般労働者派遣業)に統一されます!の案内
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000178229.pdf
東京労働局HPより、特定労働者派遣事業(届出制)から労働者派遣事業(許可制)へ早期切替を!の案内
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0147/1355/2016531163053.pdf
平成27年9月30日に労働派遣法が改正され、労働者派遣業は「許可制」に一本化されました。経過措置が平成30年9月29日まで設けられていましたが、この経過期間もあと6か月で終了します。
・平成30年9月30日以降労働者派遣事業を行う場合すべて許可が必要になります。許可なく労働者派遣事業を行うと「無許可派遣」とみなされ、労働局から指導を受けることとなります。(企業名公表、罰則等)
・許可を受けるためには、許可を受けるための条件を満たす必要があります。(財産的基礎、事業所、派遣元責任者に関する要件)
経過期間の終了が近くなる時期は、多くの企業が申請に訪れ混雑するとともに、審査に数か月の時間を要しますので、早めにご対応をお願いいたします。
なお、労働者派遣事業の届け出手続については、公認会計士及び行政書士ではなく「社会保険労務士」にお問い合わせください。

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