一般労働者派遣事業等における監査証明

2015-04-13

一般労働者派遣事業等における監査証明

1.どういう仕組?

2.監査では何をする?

3.事前の準備は?

4.料金は?

5.会計士を探すときの注意点

 

1.どういう仕組?

厚生労働大臣の許可が必要とされている(労働者派遣法5条)「一般労働者派遣事業」および「職業紹介事業」(以下、一般労働者派遣事業等)について、新たに許可申請または許可の更新しようとする会社は、公認会計士または監査法人(以下、会計士等)による監査証明が必要になることがあります。

(税理士では監査証明業務はできません。また、公認会計士でも当該会社の顧問税理士をしている場合は、独立性確保の観点から監査を行うことはできません)

会社の直近の決算において下記の要件(※1)をすべて満たしていれば、会計士等の監査証明が不要ですが、満たされていない場合は、預金や資産を増やす等要件を満たしたのち、決算月以外の任意の月次の貸借対照表および損益計算書について会計士等により監査を受け、監査証明を添付して労働局に提出し審査を受けることになります。

 

※1会社が申請時に満たすための要件

要件 一般労働者派遣事業 職業紹介事業
(1)基準資産要件 1事業所当たり基準資産額(※2)が2000万円以上 1事業所当たり基準資産額が500万円以上(更新申請時は350万円以上)
(2)負債比率要件 基準資産額が負債総額の1/7以上 条件なし
(3)現金預金要件 1事業所当たり自己名義の現金および預金額1500万円以上 自己名義の現金および預金残高が、150万円+(職業紹介をする事業所数-1)X60万円

※2基準資産額:資産の合計に繰延資産およびのれんを除いた額から、負債の総額を控除した額

 

 

以上をまとめると、会計士等の監査証明の可否は下記の表の通りになります。

新規申請

更新申請

前年度末の決算で要件をすべて満たした場合

不要

不要

前年度末の決算で要件を満たさなかったが、その後翌事業年度までの任意の月ですべての要件を満たした場合

必要

必要(但し、合意された手続実施結果(※3)によることも可)

※3合意された手続(AUP=Agreed Upon Procedures):会社の決算書全体について会計士等が証明するのではなく、各要件を構成する勘定科目の金額が正しく計上されたものかどうかのみについて保証する手続のことを言います。

通常、手続を行う主な勘定科目は、現金、預金、売掛金、未収入金、未払費用、前受金、借入金、商品、土地、建物、ソフトウェア、貸付金があります。

 

2.監査では何をする?

一般労働者派遣事業の申請を満たすための監査では、通常以下の4種類を実施します。

(1)前年度の決算書に計上された各勘定科目の金額と証憑類の照合

(2)申請の対象となった当年度の任意の月に計上された各勘定科目の金額と証憑類との突合

(3)前年度末から対象月までの期間における主な増減の内容

(4)関係方針の継続適用

上記の手続が行いやすくするように、以下の事前準備をしっかりしておきましょう。

 

3.事前の準備は?

(1)スケジュール確認

いつまでに申請・提出が必要なのか労働局によく確かめておきましょう。

そこから逆算して、「監査報告書」又は「合意された手続実施結果報告書」(以下、監査報告書等)がいつまでに必要なのかスケジューリングしていくことが大切です。

たとえば、1月末までに申請が必要であれば、1月中に監査報告書を入手しなければなりません。監査もすぐにできるものではありませんから、監査にかかる日数もあらかじめ計算に入れておきましょう。

 

(2)仮決算の実施

決算月以外の任意の月で申請・提出予定であれば、事業年度の途中の月で仮決算を行うことが必要です。(実際には申請する月の前月までの決算を行う会社が多いようです。たとえば1月末申請ならば、遅くても12月までの決算を行います。)

仮決算といっても、年度末の決算と同程度の決算手続が求められます。これは「合意された手続」を実施する場合でも同様です。

すなわち、下記のような処理を行います。

・減価償却費の計上

・前払費用、未払費用の計上

・期末棚卸資産の計上

・貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金など、各種引当金の計上

・(実際に確定申告・納付はしませんが)法人税・住民税などの算出

決算書の数値がすべての許可要件をクリアできる月であり、かつ、提出期限に間に合う月をご選択下さい。会計業務を顧問税理士に経理記帳をご依頼されている会社は、顧問税理士と、いつ月次決算が終了するかなど、事前に検討・確認しておくことが重要です。なお、監査時はできれば、顧問税理士に立ち会ってもらった方がよいでしょう。

 

(3)決算書等の作成

(2)で選択した仮決算を行う月において、作成期間を明示して(例:自2014年4月至2014年12月31日 など)決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)をご作成下さい。タイトルは、正規の年度末決算と間違えないように「月次決算書」とでもしておいたほうがよいでしょう。

年度末の決算書に勘定科目内訳を作成するのと同様に、仮決算においても貸借対照表のすべての勘定科目については、科目の内訳を作成します。

監査人は、作成された勘定残高がどのような内訳から構成されているのかを確認するので、内訳表がないと監査できず、その結果監査証明がもらえないことになってしまいます。

あと、決算書及び各種会計帳簿(総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳、各種補助元帳など)は、事業年度末と仮決算の月の分をあらかじめ紙に印刷してファイリングしておきましょう。

会社自身のセルフチェックもでき、また監査人も資料が見やすくなるため、監査にかかる時間が少なくなることになります。

監査当日に顧問税理士から総勘定元帳をFAXやメールで送ってもらうような事態は避けましょう。

 

(4).証拠資料の整理・保管

各勘定の内訳を作成すると同時に、作成の根拠となった資料をそろえておきましょう。

たとえば以下のようなものがあります。

「現金」:会社用に使っている現金そのものや現金出納帳や実査金種表等

「預金」:通帳や銀行から発行された残高証明書等

「売上」「売掛金」:請求書控えや売上管理台帳等、

「給与手当」「未払給与」:給与台帳等

「外注費」「未払外注費」:請求書、領収証等

監査をする人は、内訳明細と上記の証憑類を突き合わせて、内容が一致しているか確かめます。もし証拠資料がなければその内訳は存在しないものとして扱われてしまいます。

もし手元にない場合は、(請求書であれば)相手先に再度発行してもらいましょう。

 

4.料金は?

新規に許可を得て行う場合、監査証明が必要になるので、相応の時間がかかります。

監査証明を発行するためには、決算書の勘定科目(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)をすべて監査するので、最短でも1日半~2日、資料等が十分にそろっていなかったらさらに時間がかかります。

更新の場合、対象となる勘定科目が少ないことと、「火合意された手続実施結果報告書」(監査ではなくなります)になるので、時間は少なくなります。

資料がすべてそろっていれば、半日~1日で完了するでしょう。

当事務所で監査証明発行をお受けした場合の報酬は、以下のようになります。

作業時間料

証明書発行料

合計

新規許可申請 1.5~2日(2万円/時) 10万円~15万円 25万円~40万円
更新許可申請 0.5~1日(2万円/時) 5万円~10万円 11万円~24万円

注:明細を作成していなかったり、資料がそろっていなかったり等、書類が不備な場合、および監査の結果、決算の修正が必要になり追加の監査時間がかかる場合は、上記の表に追加して作業時間報酬が発生します。

 

5.会計士等を探す際の注意点

一般労働者派遣事業および職業紹介事業の新規登録・更新で監査証明が必要なことを知っている会計士は、非常に少ないと思います。

新規申請と更新との違いについてもよく知らないことから、会計士の手続に不備が生じ、監査を依頼した会社との間でトラブルになることもよくあります。

いくつか注意点をあげてみました。

① 制度を理解していない会計士はNG

会計士が制度をよく理解していないようであれば、報酬が安くても、頼まないほうが無難です。

問合せ時に、作成した監査報告書はどこに提出されるのかなど、専門知識を確かめてもよいでしょう。

 

② 監査をする意味があるかどうか理解している会計士はOK

一般労働者派遣事業、人材紹介事業の監査証明をもらっても、登録申請が通らない場合があります。

そのあたりの事情を知っている会計士は、会社の状況をヒアリングしたうえで、監査をすることに意味があるかどうかを判断します。会社が条件を満たすことができるかある程度把握できるからです。依頼する際に、財務内容の質問がなかった場合は、依頼しない方がよいでしょう。①と同様、トラブルがおこりやすくなります。

 

③ 個人の会計士に頼む場合は、報酬に違いなし

通常、監査法人に頼む場合、個人会計事務所よりも報酬が高くなりますが、個人の会計事務所に依頼する場合、報酬は大差ないと思います。

 

(参考)

日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会研究報告第24号

一般労働者派遣事業 等の許可審査に 係る中間 又は 月次決算書に対して公認会計士等が行う 監査及び合意された手続業務に関する研究報告

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/24_7.html

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